ド素人がアベノミクスを説明してみる<2>

アベノミクス前の状況は<1>で説明させていただきましたが、

この状況で取られた対策がアベノミクスというものです。

 

アベノミクス

1.大胆な金融政策

2.機動的な財政政策

3.民間投資を喚起する成長戦略

の3本の柱らしいのですが、2はずっとやってきた公共事業をもっとやりますよというだけのことですし、3はまだ何もやってないに等しいので、現時点では「1.大胆な金融政策」の評価しかできません。

 

この「1.大胆な金融政策」は以下のようなパッケージです。

  • 2%のインフレ目標
  • 無制限の量的緩和
  • 日銀法の改正

です。

 

2%のインフレ目標を立て、これを実現するために無制限の量的緩和を日銀に言うこと聞かせてやるということです。

 

デフレによって物価が下がることで実質的な金利が高くなり、需要の減少、政府債務の実質的な増大を招いていたわけですから、これを修正してインフレにして実質的な金利を下げるというのは経済成長を目指すうえで正しいと思います。

 

また、インフレにすると、累進税率のおかげで実質的な税率は上がりますし、年金の支払い金額決定ルールのマクロ経済スライド(実はコレ全部スライドしない。インフレになると実質的に支給額が減る)が機能して実質的な支払額切り下げになり財政も助かります。また、国の借金を返す時も額面の税収がインフレで増えていれば楽になります。インフレは実質的な借金の棒引きでもあります。

 

インフレが実質的な借金の棒引きであれば、当然金を貸すよりも借りる人の方が得になるので、借りて使おう、借りて投資しようという気になって、消費や投資が増えるというわけです。

 

その場合、お金を貸したい人より借りたい人が増えるわけなので、普通に考えれば金利が上がることでお金の需要と供給が調整されます。

 

金利が上がると、国が新たに借金する際に必要な利子が多くなり、財政上は問題です。

 

また、新しく発行された金利の高い国債の方がすでに発行されている金利の安い国債のほうが良いので、すでに発行されている国債の値段が下がります。

 

預金はあるけど企業が借りてくれないので、銀行は仕方なく国債を大量に買い込んでいるのですが、この国債の値段が下がってしまうと銀行に損失が出るという問題もあります。

 

で、2%のインフレを実現する方法として、無制限の金融緩和というやりかたを取りました。

 

日本銀行は輪転機を回せばいくらでもお金が作れます(実際には実物紙幣ではないですが)。沢山お金を作ることで、相対的にお金の価値を低くする=物価を上げるという作戦です。

 

そのために国債や株をじゃんじゃん買い、そのための代金を輪転機を回して市中に払うことで、出回るお金を増やすということをしています。

 

これを2年間で2%の物価上昇を実現するまで際限なくやる。と宣言して始め、インフレ期待を作りました。

 

先日はその目標達成が厳しそうなので更に買い入れの額を増やすという黒田バズーカを発射しみんなのインフレ期待を強化しました。

 

お金の量を増やしても、貯金されるだけで需要に結びつかないから物価は上がらない説というのもあり、確かにその側面もあるのですが、「バーナンキ背理法」というお話があってこれに勝てるほどパワフルなものではないと感じます。

 

バーナンキ背理法」によると、「お金の量を増やしても物価が上がらないとすれば、国の予算を全部輪転機回して作るようにすれば税金取らない国家できちゃうじゃん。そんなわけないでしょ?お金の量が増えれば物価は上がるよ」という身も蓋もないもので、これに勝てる金融緩和効果なし論は見たことがありません。

 

また、 金融緩和により円の価値が低くなれば、外国の通貨に対する価値も減るので、円安に向かうはずです。

日本のGDPを簡単に伸ばす方法は実はあります。

日本のメーカーが中国に移した工場が生産したものは、日本のGDPではなく中国のGDPになりますが、この工場をもう1回日本に戻せばその工場の生産したものは日本のGDPですから簡単にGDPは伸びます。雇用も増えますね。

中国に工場を移転した理由としては賃金が安いからというのが大きいと思いますが、円安にすれば相対的に日本人の賃金、工場の土地代、電気代が安くなるわけです。

そうすれば日本に工場を置くことが円高に比べるとに有利になります。

 

インフレになるとみんながお金を借りたがるので、金利上昇を招きやすいという話がありましたが、この作戦であれば、みんなが借りたがる分日銀が沢山お金を作るので金利上昇はしにくくなります。

 

国は借金するために国債を発行しますが、金利を安くしても日銀が国債を買う=お金を貸してくれるので金利を高くする必要がないのです。このため、国債の利払いに払う費用が増大することもありませんし、国債と競合するその他の債券や預金金利なども金利を高くする必要が薄くなり、安い金利でお金を集められます。そうすれば銀行も安い金利で貸せるので、金利は上がらないで済みます。

 

金利が上がらなければお金を借りて投資しようという企業の意欲や、お金を借りて家を買おうといった需要をスポイルしないですみます。

 

このように異次元緩和は、

  • デフレをインフレに変え、実質金利を低くすることで需要を拡大する。実質的な増税と借金の棒引きにもなるので国の財政も楽にする。
  • 円高を円安に変え、輸出を増やすとともに輸入物価を上昇させる。日本人の賃金が相対的に安くなるので、求人も増え、失業率も下がる。
  • その割に金利は上がらない。

という、20年間苦しんできた経済成長、デフレ、円高、国の財政、失業の全てを改善する可能性があるというおいしい政策のはずです。

 

 

副作用の可能性はいくつかあります。

 

よく言われるのが、制御不可能なハイパーインフレになるというものです。

 

実は物価上昇率を2%にするという方針は、2%を超える物価上昇をさせないという意味でもあります。インフレターゲットと言われる政策で、目標とする物価上昇率を下回るか、上回るか次第でお金の量を変化させることを宣言しておくというものです。

 

これ、ヨーロッパなのでやっている国ありますが、もともとはインフレを制御するための政策として比較的上手くいっている政策です。

 

このため、そんなに心配はいらないような気がします。むしろ物価上昇率が2%を超えた所で逆黒田バズーカが発射されデフレに戻ってしまう方が心配な気がします。

 

よく言われますが、デフレの時にハイパーインフレを心配するのは、餓死しそうなときにメタボを心配するようなものだと私も思います。

 

 

超円安になってエネルギー価格が上昇して、生活が破たんする。

 

インフレになるということはモノに対する通貨の価値が下がる=モノの値段が上がるということなので、日本がインフレになれば円の価値が外国の通貨に比べて安くなり円安になります。

 

円高で困っていたのですからこれはいいことです。

 

しかし、たまに言われていることとして、あまり国が借金しすぎると通貨の信認を失い超円安を招くというものがあります。

 

これも、餓死しそうな人がメタボを心配しているようなものと思います。

 

基本的に円はとてもカタイ通貨です。何しろ10年物国債金利が0.5%でも買ってもらえる位ですから。

 

国に1000兆円もの借金があっても、家計に1600兆円金融資産があってそこから借りているだけなので、外国に借金があるわけではないですから今のところは心配ないと思います。ただ、この調子ではいつか限界が来るというのは本当です。

 

こちらの問題は、もし信認を失うようことが起こった場合、即座に年金の金額を減らし、増税して財政を均衡させられるかというと実際は難しいことではないでしょうか。

 

日銀がお金の量を調節することはすぐできますが、年金の切り下げや増税は法律も変えなければいけないし時間がかかります。

 

 

資産価格が上昇する。

 

これが一番の問題かもしれないです。

 

だぶついたお金が消費でも生産設備でもなく株や土地などの資産の購入に回ってしまい、これらの価格の値段が上がるという事態です。

物価と近いペースで上昇してくれるといいですが、資産価格と物価は意外と関係が薄く、バブル期にも株や土地は爆アゲしたのですが物価はそれほど上がっていませんでした。

 

資産の価格が上がってもGDPにはあまり関係ないですし、土地が値上がりすれば賃貸住宅の家賃も上がるでしょうから、持ってる人(部屋を貸す人)と持ってない人(部屋を借りる人)の格差が自動的に拡大してしまいます。

 

急激でなければ、株や土地の値上がりで儲けた気になった人がデパートで買い物をしたり高級車を買ったりして多少消費に回ったりしますし、固定資産税も沢山取れるようになり国の財政も少し助かるのですが、資産バブルはいつか崩壊するのでその時に起きることを考えるとゾッとします。

 

インフレターゲット物価上昇率をターゲットにしているため、資産価格が爆アゲしたとしても物価が動かなければお金の量を減らすことができません。選択的に資産の価格だけを調整するには、お金の量ではなく法律などで調整するしかないでしょう。