シリア内戦は本当に泥沼です

イスラム教

シリアは内戦で大変なのですが、どれくらい大変かを素人なりに書いてみようと思います。まずは主要プレーヤーの紹介です。

 

シリア政府軍
政府軍って聞くとそんなに悪じゃない気がしますが、シリアに関しては相当悪です。何しろ最悪の圧制者アサドが君臨するシリアでは、政府軍の主敵はシリア国民ですから。

アラブの春の時も治安部隊がデモ隊を実弾で撃ちまくりましたが、政府軍も普通に敵勢力が占拠する地域に無差別爆撃します。それも、爆薬とクズ鉄の破片詰めたドラム缶（樽爆弾）をヘリコプターから足で押して落として爆発させるという雑なやりかたで多くの自国民を日々殺しています。

シリアに比べれば天安門事件なんてかわいいものです。

有志連合の誤爆による民間人被害もありますが、政府軍の樽爆弾による民間人被害はその比較にならないほど多いみたいですよ。

政権は宗教色はあまり強くないものの、イスラム教でもシーア派の一派でアラウィー派というマイナーな宗派が牛耳っている

ので、国民の大多数のスンニ派は敵と言う認識なんでしょうか？
最悪の政府ですがロシアは支援しています。北朝鮮とも仲が良い。悪の枢軸...

 

ヒズボラ
イスラム教でもシーア派の民兵組織です。シーア派なのでイランがスポンサーとなっています。アラウィー派の政権と近いので、政府側について戦っています。アメリカやイスラエルのことが大嫌いで、これまでハイジャックや自爆テロなど様々なテロを仕掛けています。スンニ派のことも嫌いです。
一方、貧困層支援や子供の教育を行うなど良いこともしています。
あくまで政府軍の助っ人と言う位置づけなので、シリアでは独自の占領地域などはないと思います。


IS（イスラム国）
スンニ派の中でも堕落した現在のイスラムでなく、聖典コーランに立ち戻ろうぜというイスラム原理主義を信奉する人たち。これだけ聞くとマルチンルターっぽくて聖人に聞こえますが、コーランは戦争して異教徒殺して奴隷にしてみたいなムハンマドの歴史が書いてある本なので、そこに立ち戻って同じように戦争して異教徒殺して奴隷にしてみたいなことをやっているという人たち。

自爆攻撃を得意としますが、クルアーンでは自殺は禁止のはず。原理主義の割にご都合主義なところもあります。

とりあえずオスマントルコの再興を目指し、最終目標は世界征服。

残虐性は異常なレベルですが、アメリカが訓練した旧イラク軍や旧イラク政権崩れがジョインしているようで、意外と行政能力もある。
占領地で税金を取ったり、石油を売ったり、サウジのスポンサーもいて資金も豊富。

 

ヌスラ戦線（JaN)
こちらはアルカイダ系のイスラム原理主義組織の民兵。スンニ派で原理主義ということでISと考えは近いので以前はつるんでいたが最近は近親憎悪で仲が悪い。ISほど残虐ではなく、国を作るみたいなことよりもアメリカを攻撃することに執念を燃やす人たち。こちらもサウジやカタールなどのスポンサーが資金源。スポンサーの資金をもらうことでISと競合するのも仲が悪い原因か。とりあえずアサド政権打倒が主な活動目的。
ISと同じように黒いアラビア語の旗を持っているのでISと見分けがつきにくい。同士討ちとかしないのだろうか？


自由シリア軍（FSA)
元は政府軍の将校がスピンアウトしてできた民兵組織。一応スンニ派のムスリムなんですが比較的世俗派なので、アメリカの覚えがめでたく支援を受けている。
しかし、イスラエルの味方のアメリカから支援を受けているため、人気はイマイチ。当然ISとは対立、ヌスラとも以前は敵の敵は味方ということでつるんでいたが今は仲が悪い。アサド政権打倒が主な活動目的だが組織がオーガナイズされている感じがなく、仮に政権倒したとても国の運営は無理だろう。

 

イスラム戦線
スンニ派の武装勢力。一応イスラム国家の成立を目標に掲げてアサド政権と戦っているが、狂信者感は低くISとは仲が悪くむしろFSAに近い？

 

クルド人
クルド人はトルコ-シリア-イラク辺りに住む民族で、2000万人ほどの人口があり国を持たない最大の民族らしいです。トルコでもシリアでも少数派なのでどちらの国でも邪険にされるちょっと気の毒な民族。傍から見ると最もまっとうな戦う理由がある勢力に思えます。勢力はいくつかにわかれていますが、一緒に戦ってます。実は基本的にはスンニ派なのですが、ISはクルドにとっても宿敵です。
前線にもたくさん女性兵士がいる軍隊で、シリアの勢力の内唯一応援したくなる勢力。あとは全勢力evil。

このクルドもアメリカが支援しています。

 

主な勢力がこれくらいあるのですが、基本的に共闘関係にあるのは「政府軍とヒズボラ」、「自由シリア軍とクルド」の2組だけしかなく、敵の敵も敵という敵だらけのぐちゃぐちゃな状況にあるようです。


こんな感じで、シリアの人には同情を禁じえません。
パリの犠牲者を悲しむのはもちろんですが、シリアの大勢の犠牲者も確かに悲しいです。ISにつかまると斬首されてしまうし、樽爆弾も落ちてくるので、危険すぎてメディアが近づけずニュースに出てこないためあまり同情されないという悲しさ。


最強級の圧制者かイスラム原理主義の2択。というか街を取ったり取られたりで変わるわけで究極の選択すら出来ない。出来るのは難民になるかならないかの選択ですか。でもパリのテロでなかなか難民の受け入れも進まなくなるでしょう。


で、政府軍の支配地域に入れば有志連合の爆撃を受け、ISやヌスラの支配地域に入れば政府軍の樽爆弾やロシアの爆撃を受けるという...


民間人さえいなければ、政府軍とISでずっと勝手に戦っててくれれば別にいいよと思うんですが、民間人が沢山いるんだなぁ。